今回は、凍結で重度のダメージを負った…
多肉植物の再生方法を紹介します。
この記事では、エケベリア属の多肉を例にしていますが、
どのグループでも、基本は同じ対応となります。
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◆ ダメージの確認
寒さに耐えられなくなった多肉植物…
特にエケベリア属の多肉は、
外側の葉から凍ってダメージが表面化します。
そして、中心部分まで凍ってしまうと…
そのロゼットは、完全に枯れてしまいます。
エケベリアは、中心部分を守りやすい構造
▲ 冬の状態
▲ 梅雨・夏の状態
エケベリア属は、寒暖や陽射しの量で、
ロゼットのフォルムを変えやすい多肉です。
寒くなるとロゼットを閉じ、
中心部分を保温することで、冬を乗り切ろうとします。
小 or 中ダメージの状態
まず、ダメージの確認と程度ですが…
上の写真は「小ダメージ」といったところで、
外側の葉や、葉の先端にダメージがあらわれます。
ですが、株自体に大きなダメージはなく、ほぼ正常な状態です。
大ダメージの状態
▲ 凍結から2週間後の状態
次に… 深刻なダメージを負ったケースです。
ロゼットの大部分が傷んでおり、
赤黒く変色した葉は、枯れてしまいます。
1週間ほど経つと、顕著にあらわれる
▲ 凍結後の状態
凍結させた当日は、大丈夫そうに見えても…
大きなダメージを負っている場合は、
時間の経過とともに、ロゼットが崩れていきます。
成長点が無事なら再生できる
成長点とは、ロゼットの中心付近で…
新しい葉を作り出していく、重要な部分です。
この場所の凍結さえ防げれば、
多肉は再生可能で… 再起不能との、分かれ道になります。
再起不能の状態
▲ 成長点のダメージは、危ない
再起不能では、上の写真のように…
成長点付近の葉っぱが、変色(主に黒色)してきます。
こうなると… そのロゼットは、ほぼ枯れてしまい、
再生の見込みがありません。
凍結から1ヶ月後の様子
細胞が死んでいる為、再生することができません。
エケベリアの種類によって、耐寒性は異なりますが、
成長点だけは、凍らせないように注意します。
ダメージ具合の比較
左から…
- 再起不能:ピンク・シャンペーン
- 大ダメージ:ホワイト・シャンペーン
- 小ダメージ:グリーン・シャンペーン
どれも、シャンペーンという品種です。
いくつかのカラーバリエーションがありますが、
基本的に、どの色でも耐寒性は同じだと感じます。
成長具合や、個体差によっても異なる
▲ どちらもシャンペーン
ややこしい部分ですが… 同じ名前の多肉でも、
成長具合や個体差…
栽培環境によって、耐寒性が変わってきます。
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◆ 再生の流れ
続いて… 重度の凍害から、
凍結前のサイズへ、再生させる流れになります。
サンプルは、先ほどのシャンペーン
▲ 12月中旬
▲ 2月上旬
サンプルとして紹介するのは、
先ほど登場の、大ダメージを負ったシャンペーンです。
上の写真は、凍結から2ヶ月が経過しています。
4月の様子
凍結から4ヶ月が経ち… 4月上旬となりました。
水やりは定期的に行い、控えている訳ではありませんが、
一段とロゼットは小さくなっています。
【原因】根も凍って枯れている
▲ 根は、既に枯れていた
重度の凍害では、根も凍って枯れているケースがあります。
根が枯れてしまうと…
いくら水やりを行っても、多肉は水を吸えません。
その為、自分の水分を消費して… 下側の葉から枯れていきます。
初見では… ちょっと難しい
根のダメージは、ポットから抜いて目視する必要があります。
また、枯れていても… 外見では正常っぽく見えます。
確認しにくい場合は、太めの根をカットして、
「断面が茶色く枯れていないか…?」チェックしてみます。
枯れた根の除去
今回のケースでは、すべての根が枯れていました。
植えやすくするため… 取り除いていますが、
面倒なら、そのままでもよいと思います。
この後は、「土に植える or 発根まで放置」
苗の様子はボロボロですが…
状態としては、未発根の「カット苗」と同じです。
再び、土に植えてもOKですし、
発根を目視したい場合は… 日陰や明るい場所に置いておきます。
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【5月上旬】 発根を確認
▲ 発根するまで、植えずに放置
前回から約1ヶ月後の「5月上旬」に発根を確認。
凍結からでは… 約5ヵ月での発根となりました。
土には植えず、やや明るい場所で管理した状態です。
多肉は「水切れ」に強い植物
グループによって、水持ち具合は変わりますが、
基本的に、多肉は「水切れ」に超・強い植物です。
「多肉は、2ヵ月くらい断水させても大丈夫!」という根拠は、
こういったことからも確認できます。
葉が薄い多肉の葉っぱは、水持ちが劣るので注意
土に植えた場合
土に植えた場合のサンプルとして…
葉の外側だけが傷んだシャンペーンで確認してみます。
こちらは、凍結から土に植えっ放しの状態です。
【4月上旬】 発根を確認
試しにポットから抜いてみましたが、
同じように発根しています。
陽に当たっていない根は、白い状態です。
思った以上に、根が枯れていた
ロゼットの傷みは、あまり感じませんでしたが、
思った以上に、既存の根は枯れていました。
暖かくなれば、自然と発根する
凍結で、根を失ってしまっても、
暖かくなる4月頃になれば、
土に植えても… 植えなくても… 自然と発根します。
5月なら湿気も増えるので、より確実かと思います。
どっちがいいの?
早く発根させるなら、
土に植えて、日向で管理し…
水やりで、適度に湿気を与えたほうがよいと思います。
夏まで育てた状態
大ダメージのシャンペーン
▲ 8月の状態
▲ 春の様子
春に発根後… 新しい土に植え直し、
8月下旬となった状態です。
4月と比較すると、だいぶ再生しています。
小ダメージのシャンペーン
▲ 8月の状態
▲ 春の様子
夏なので… 葉も伸びて夏顔となっていますが…
これくらいは、正常な成長だと思います。
大きくしたい場合は、肥料入りの培養土
紅葉具合より… サイズを元に戻したい場合は、
肥料入りの培養土がオススメです。
普通に販売されている「多肉植物の土」で十分だと感じます。
【1年後】冬まで育てた状態
大ダメージのシャンペーン
▲ 凍結から1年後
▲ 凍結後の様子
12月に凍結し… 約1年後の状態です。
サイズも戻り、紅葉具合も悪くはないと思います。
小ダメージのシャンペーン
▲ 凍結から1年後
▲ 凍結後の様子
こちらは、凍結の影響かは定かではありませんが…
急に、成長点が乱れてしまいました。
こんなことも、たまにはあるかと思います。
ここまでの、まとめ
ここまでを、まとめますと…
重度の凍害でも、成長点のダメージ次第で、
再生する確率は高いと感じます。
ただ… 12月や1月の凍結では、状態が上向くまで、
4ヶ月ほど掛かることも珍しくありません。
発根は、我慢して待ってみる
多肉の生存戦略からすれば…
冬に発根しても、よいことはありません。
それより、暖かくなる春まで待ったほうが確実です。
多肉の目線で考えると、春の発根は普通だと思います。
半年あれば… そこそこ大きなる
そして春になったら、発根の様子を確認します。
重度の凍害では、体力も残っていないので、
春・夏の成長期を狙い… 新しい培養土に植え替えます。
夏は、それなりに葉が伸びてしまいますが、
適正な範囲で、栄養補給を行うことが大切です。
冬になれば… フォルムも整い、サイズも戻ってくれます。
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▼ 他のエケベリアの事例
他にも同じような事例があったので、
いくつか、簡単に紹介します。
七福美尼
七福美尼【しちふくびに】は、
例えば「桃太郎」と比べると、耐寒性は低く…
同じように管理していると、凍結しやすい品種です。
凍結前の状態
【12月中旬】凍結する
凍結は12月中旬となり、
上の写真は…2ヶ月が経過した2月の様子です。
【4月下旬】凍結から約5ヵ月後
前回から2ヵ月が経ち… 4月下旬の状態。
状態は悪いままですが、枯れてはいません。
根が枯れて、機能せず
シャンペーンと同様に、
根は付いていますが、ほとんど枯死。
その後、発根まで土には植えず… そのまま観察。
【5月下旬】発根を確認
前回から、約1ヶ月後の5月下旬に発根。
凍結から約半年が経過しました。
「多肉植物の土」に植替え
表面は「鹿沼土・細粒」ですが、
初期肥料が入っている…
「多肉植物の土」を使用しています。
その後の様子
【8月】夏の状態
栄養を吸収して、元気に育っています。
冬の状態を考慮すれば…
まずまずの成長具合だと思います。
【12月】冬の状態
凍結から、約1年後の状態です。
紅葉具合は、もう一歩という感じですが…
サイズも回復し、七福美尼らしさを取り戻しています。
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サブセシリス
サブセシリスは、七福美尼と同様に、
「桃太郎」と比べると、耐寒性は低く…
同じように管理していると、凍結しやすい品種です。
凍結前の状態
【12月中旬】凍結する
元々は、青白い葉が特徴になりますが、
凍結の影響で、くすんだピンク色になりました。
【5月下旬】約半年が経過
凍結から、約5ヵ月の様子。
ずっと水を吸えていませんが、
この状態でも、まだ生きています。
茎の下部も、枯れている
今回のサブセシリスは、根っこどころか…
地表面の茎も枯れてしまっています。
ついでに、発根を確認
よく観てみると…
枯れた茎の上部から、発根を確認しました。
これは「多肉植物あるある」なので、
栽培に慣れてくれば… 不思議には感じないと思います。
茎をカットして、植替え
▲ 枯れた部分でカット
▲ 新しく植える
こちらも、表面は鹿沼土ですが…
七福美尼と同じく、市販の「多肉植物の土」を使用しています。
その後の様子
【7月】夏の状態
【11月】晩秋の状態
若干、ロゼットは広がり気味ですが…
もっと寒くなれば、丸まってきます。
また、春に比べれば… 十分な回復具合だと感じます。
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ルエラ or ロウ
最後に「ルエラ」または「ロウ」という品種を紹介します。
こちらも「桃太郎」と比べると、
耐寒性は低いので、注意して管理します。
凍結前の状態
これまでのタイプとは異なり…
圧倒的に群生するエケベリアです。
購入から10ヵ月ほどが経った状態で、元々は1ポットでした。
ルエラ or ロウ どちらも同じ品種(たぶん)
▲ ネームタグは「ロウ」
余談になりますが… エケベリアの交配種では、
同じ品種に、複数の名前が付いて、
それぞれ流通していることが、まれにあります。
ちなみに…(2022.01 現在)
ピュアリーフさんでは「ルエラ」、
日本花キ流通さんでは「ロウ」という名前で販売されています。
【12月中旬】凍結する
かなり、酷い状態となり…
白ポットは大ダメージで、
いっぽうの黒ポットは、中ダメージといった感じです。
茎が生きていると…
再生の可能性あり
今までのタイプとは異なり…
ロゼットと、その成長点が枯死しても、
茎にダメージがない場合は、再生する可能性があります。
茎が短いエケベリアは… 望み薄
ただ、シャンペーンのように…
茎が短いエケベリアでは、成長点が黒ずんでいると、
茎まで深刻なダメージを負ってことが多く、
再生の可能性は、著しく低下します。
もう1ポット、購入
当時「これは、枯れるパターンかな?」と思い、
追加で1ポット購入。
結局… 枯れずに再生しています。
同じ品種だと気付かず… ロウを購入
ルエラを散々、育てていたにも関わらず、
同じような多肉を買っています。
これも「多肉あるある」の1つです。
【6月下旬】約半年が経過
これまでのケースとは異なり、
意外と大丈夫そうだったので、
植替えもせず… そのまま観察しています。
根の様子は、確認せず
群生(茎・枝)の様子
このルエラ(ロウ)は、
小さな枝が、たくさん伸びやすく、
どれか主幹なのか… 見分けが付きません。
【12月】凍結から約1年後
秋に植替えを行い、こんな感じとなりました。
あと1年あれば… さらに群生して、
モリモリの株に成長すると思います。
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◆ 重度の凍害 まとめ
最後に、重度の凍害となった多肉の対処法をまとめます。
- 凍結後… 成長点が変色しなければ… 再生の可能性が高い
- 成長点を失っても… 茎(主幹)の高さが4cm ほどあれば、脇芽が伸びる可能性あり
- 凍結後の発根は、暖かくなる春頃に期待できる
- 発根するまでは水を吸えず、ロゼットは小さくなる
- 春に発根すれば… その年の12月頃には、いい感じに戻っている
1番のポイントは、春まで気長に待つこと
なんだかんだで、凍結させても… すぐに対処できる作業はありません。
しいて言えば、0℃以下の場所に置かないことです。
1週間ほど経っても、成長点の変色がなければ、
再び、奇麗な葉を取り戻してくれます。
慣れないうちは… 凍結後の多肉が気になりますが、
球根や宿根草だと思って管理すれば、
春からリスタートして、栽培の続きを楽しめます。