多肉植物の学名を見ていると、園芸品種(栽培品種)ってヤツが… けっこうな頻度で現れます。
- Aeonium arboreum ‘Zwartkop’ / 黒法師
- Sedum adolphi ‘Golden Glow’ / 銘月
- Echeveria ‘Nobara-no-sei’ / 野バラの精
- Graptoveria ‘Debbi’ / デビ-
- Graptosedum ‘Francesco Baldi’ / 秋麗
などなど… 山ほどあります。
園芸品種(栽培品種)は、学名の後に付いている【‘ ’】シングルクォーテーションでわかります。
今回は、園芸品種(栽培品種)について調べてみましたので、ザックリとですが紹介します。(多肉植物がメインです)
独学なので不正確な情報も混じっているかもしれません。恐れ入りますが、ご了承ください <(_ _)>
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基礎知識
「国際藻類・菌類・植物命名規約」によって命名される学名との違いや、栽培植物に使われる言葉の意味を整理しました。
栽培品種に使われるワード
園芸品種(栽培品種)とは?
Wikipediaから、引用させていただくと…
一般的には望ましい性質を選抜した増殖可能な植物の集合である。選択・交雑・突然変異等により人為的(育種、品種改良)あるいは自然に生じ、他の栽培品種や原種と識別される特性を安定して有し、かつ、その特性を保持したまま殖やすことができる。
栽培品種 = 園芸品種
栽培品種は主に農業・園芸の分野で古くから利用され、園芸分野においては園芸品種(えんげいひんしゅ)の語が使われることがある。また、誤解の恐れがなければ単に品種と表記されることも多い。
栽培品種名とは?
「国際栽培植物命名規約」より引用・・・
19.1 栽培品種名は、所属する属以下の分類群に正名に栽培品種形容語を組合せたものである
- Graptosedum ‘Francesco Baldi’
- Sedum adolphi ‘Golden Glow’
なので、上記のように記載されているのが「栽培品種名」になります。
栽培品種名は、学名ではない
栽培品種名も学名っぽく掲載されていますが、実際は学名ではなく栽培品種名になります。
栽培品種形容語とは?
「‘ ’」に入る名前になり、国際栽培植物命名規約には、細かいルールが書かれています。
- 紛らわしい・印象操作・学名と重複するなどの名前は、NG
- 用語・よく知られた慣用句・個人名・地名・造語は、使ってもOK
他にも、細かなルールがあります。また、「国際植物命名規約」で園芸品種名を表す【cv】の表記は「国際栽培植物命名規約」に則ると… NGとなります。
最短の名前は…「属名」+‘栽培品種形容語’
「国際栽培植物命名規約」より引用・・・
栽培品種名であることを満たす必要最低限の要素は、栽培品種形容語とラテン語形の属名、あるいは明確な当該属名と同等の意味をもつ普通名(common name)との組み合わせである。ある栽培品種が種以下のランクの分類群に所属されうるとき、属名の代わりにその分類群の学名(または同等の明確な普通名)が栽培品種形容語と組み合わせられることもある(第19条9項も見よ)
- Echeveria ‘Nobara-no-sei’
- Graptoveria ‘Debbi’
- Graptosedum ‘Francesco Baldi’
以上のようなパターンが、最短の栽培品種名になります。
普通名(common name)との組み合わせ
「普通名」とは… 一般にさまざまな国で普通に用いられる植物名のことで、英名や和名などの総称です。
◆ リンゴの「ふじ」の場合
- Apple ‘Fuji’
- Malus pumila ‘Fuji’
このように「属名」以外にも「普通名(common name)」との組み合わせもOKで、どちらでも表記可能です。
二名法は、どこ行ったの?
学名は「属名」+「種小名」の組み合わせのはずですが、栽培品種の場合では、下記のように… 学名の形式から外れています。
- Sedum adolphi ‘Golden Glow’ / 銘月
- Graptosedum ‘Francesco Baldi’ / 秋麗
「種小名」が付いていたり… 付いていなかったりします。
これは… 栽培品種に対してのルールがあるからで、そのルールが「国際栽培植物命名規約」になります。
学名の命名ルールとなる「国際藻類・菌類・植物命名規約」とは異なります。
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国際藻類・菌類・植物命名規約との違い
学名は「国際藻類・菌類・植物命名規約」に則って命名されていますが、栽培品種は「国際栽培植物命名規約」に則って命名されます。
- 学名:国際藻類・菌類・植物命名規約(※ 以下、国際植物命名規約)
- 栽培品種:国際栽培植物命名規約
どちらも、日本語訳版が販売されています。
国際植物命名規約との関係
「国際栽培植物命名規約」より引用・・・
1.1 栽培植物は、国際栽培植物命名規約に従って場合により単に属のレベル、あるいは種以下のレベルに、命名される
1.2 分類群間の雑種は、栽培下で生じたものも含めて、望まれるなら国際植物命名規約の附則Ⅰ(雑種の学名)において規定される学名が命名される(本規約第Ⅲ部も参照)。あるいは、交配によって生じた栽培植物は、本規約の規定のもとで栽培品種またはグループとして命名される
…だ、そうです…。
内容的には…?
1.1
「属のレベル、あるいは種以下のレベル」ということなので、属(エケベリア属・セダム属など)と種(亜種)に栽培品種名が付けられる… といった内容です。
1.2
分類群間の雑種とは、たまたま自然に交配されたケースのようで、その場合は国際植物命名規約に従って命名し、人為的な交配なら栽培植物命名規約に従って命名しなさい… といった内容だと思います。
実例1. Solanum x procurrens は、英国の栽培地で生じた、ヨーロッパの S.nigrum と南米の S.physalifolium の雑種の学名である
セダム「虹の玉」の学名は2パターン
Sedum x rubrotinctum or Sedum rubrotinctum
よく流通していて多肉の定番ともいえるセダムの「虹の玉」ですが、学名は書籍によって2パターン見られます。
多肉植物全書 All about SUCCULENTSによると「虹の玉」は、セダム属内の雑種のようです。
Sedum x rubrotinctum
米国カリフォルニア州のナーサリーで生まれた交配種で、後の1950年、セダム・ルブルム(S.rubrum)の名でイギリスに導入されたものであろうと見られている
なので、オーロラも…【Sedum x rubrotinctum ‘Aurora’】になります。
まとめると…
自然に生息している原種(野生種)や自然交配なら「国際植物命名規約」だけど、人為的に生み出した個体を栽培して、その種に名前を付けるなら「栽培植物命名規約」に則って命名してね! といったところでしょうか…。
国際植物命名規約 | 【〇〇目〇〇科〇〇属+種+(亜種)】までの原種や雑種 |
---|---|
国際栽培植物命名規約 | 属グループ以下で交配したり、突然変異で生まれた個体を栽培した場合 |
異なる属の栽培品種
多肉植物のネームプレートを見ると、属名をミックスした名前をみかけます。
「属」なので、「エケベリア属」や「セダム属」「グラプトペタルム属」等の大きなグループになります。
そして、違う2属間で交配させたのが「グラプトベリア」や「グラプトセダム」「パキベリア」のような属名です。
グラプトベリア | x Graptophyria | Graptopetalum × Echeveria |
グラプトセダム | x Graptosedum | Graptopetalum × Sedum |
パキベリア | x Pachyveria | Pachyphytum × Echeveria |
雑種属の場合は、【国際植物命名規約より】短縮雑種式として2つの名前を結合し、さらに「×」を名前の前に付けます。
よく流通している2属間の栽培品種
x Graptoveria ‘Debbi’ / デビ-
x Graptosedum ‘Francesco Baldi’ / 秋麗
x Pachyveria ‘Powder Puff’ / 霜の朝(あした)
x Sedeveria ‘Soft Rime’ / 樹氷
「種(亜種)」の栽培品種
「種(亜種)」の栽培品種といっても… 普通にポットで販売されている植物になります。
- 種の選別や突然変異で生まれた個体を栽培
- 交配によって生まれた個体を栽培
❶ 種の選別や突然変異で生まれた個体を栽培
園芸品種名の中には、「属名」+「種小名」+‘〇〇’のパターンもあります。この場合は、1つの原種から作られるので「種小名」が付いているのだと思います。
黒法師の場合
Aeonium arboreum ‘Zwartkop’
黒法師の園芸品種形容語には、ツヴァルトコップ【Zwartkop】とよく表記されています。
ツヴァルトコップの葉は濃い紫色ですが、原種となるアルボレム【Aeonium arboreum】の葉は、緑色だそうです。
上の写真は、どちらも黒法師(とネームプレート付いていた)です。同じ環境で育てていましたが、葉の大きさや色が異なってきました。もしかすると… 違う栽培品種なのかもしれません。
❷ 交配によって生まれた個体を栽培
多肉植物の交配といえばエケベリアのイメージですが、2つの植物から交配によって新しい栽培品種を作り出します。
Echeveria ‘Nobara-no-sei’
「野バラの精」は交配によって作られたので、種小名は付きません。
また、交配種だと知らなければ【Echeveria ‘Nobara-no-sei’】の情報だけなので、品種改良なのか… 交配なのか… わかりません。
プチ情報
ちなみに…「野バラの精」は日本生まれのエケベリアで、作出者は「Toshikazu Negishi」さんです。なので、栽培品種形容語が、日本語のローマ字になっているのだと思います。
また、シノニム(別名)として【Echeveria ‘Alienor’】もあります。
- E. spec. nov. Zaragoza【ザラゴザノバ】
- E. derenbergii【静夜】
交配種や交配親を知るには、書籍や図鑑しかない
「野バラの精」の情報も、「多肉植物エケベリア Guide To Echeveria」から引用させていただきました。
多肉植物の場合… 苗を購入しただけでは、親の情報はわかりません。その多肉の属名と名称くらいは記載されていますが、交配親まで親切に記載されていることは、ほぼ…ないと思います。
上記の書籍では、原種から栽培品種まで幅広くカバーされており、学名や園芸品種について知識も身に付きます。エケベリアなら、この1冊しかありません。
2016年の発行ですが、毎年でも新刊を販売して欲しいくらいの情報量です!
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栽培品種のまとめ
いかがでしたでしょうか?
- 学名の欄で「‘ ’」で、囲まれた名前があれば園芸品種。
- 園芸品種名の書き方は、最短形式で「属名 + ‘ ’」。
- 交配の場合、親の情報を確認するには図鑑頼りになる。
大まかな内容ですが、書籍や図鑑を見る際の参考になっていただければ幸いです。
結局…「その国の普通名でいいじゃん…」となってしまいそうですが、その植物のルーツや原種の情報が消えてしまうので、命名規約によって正式な名前が普及してくれればと思います。